種まきから育苗まで
長野県内各地の国際協力田で春の農作業が始まっています。
長野市南部、若穂川田地区で国際協力田運動に関わる北城一秀さんは「遅れている」と言いながら4月初めに田起こし。4月30日に種まきをしました。
田植え前の準備段階に当たる種まきから育苗の様子を紹介しましょう。
専用の機械で
種まきといっても現代の稲作では専用の播種機(はしゅき)というものがあり、そこに育苗箱を通すことで、種(種もみ)まきができます。
播種機。右側から育苗箱を入れると培養土を敷き、水、種もみをそれぞれまき、さらに培養土をかぶせる一連の作業を設定通りこなしてくれる。完成品は左側に出てくる。
種の消毒は酢で
前段として種もみを消毒して水に浸し、発芽させておきます。
浸水槽に納まる種もみ。
種の消毒は農薬の使用を嫌って、60度ほどのお湯を使う方法が知られていますが、北条さんは食用の酢(食酢)を使っています。 24時間酢に浸した後、真水に入れ替えて2週間ほど浸して発芽させます。 播種機に入れる当日、スムーズに育苗箱に落ちるように脱水して準備完了です。 脱水には専用の機械もありますが、北城さんは古くなった洗濯機を活用しています。
播種機に入れる前に種もみを脱水する北城さん。
こうして準備した種もみを播種機を使って育苗箱にまきます。 端から育苗箱を入れると、まず培養土がまかれます。
育苗箱に培養土を敷く。
続いて種もみ、再び培養土、という順番で資材がまかれ、同時に水もまきます。
手前から散水、種もみ、培養土の順でまき、育苗箱を完成させる。
こうして完成した育苗箱が反対側に出てきます。 1時間半ほどで予定した500枚ほどの育苗箱を準備しました。
出来上がった育苗箱。まいた米の種類ごとにパレットに重ねて搬出の準備。
畑で「プール育苗」
次はこの育苗箱を育苗施設に並べて田植えに使う苗まで成長させます。 北城さんは苗を植える水田に隣接した畑で「プール育苗」という方法で育苗しています。第2次世界大戦前の長野県(軽井沢町)から始まった保温折衷苗代を、より作業しやすく現代化した方法で、「病気が出にくい丈夫な苗を育てることができる」(北条さん)そうです。
育苗箱は水田横に確保した露地(畑)にビニールシートを敷いてその上に並べていきます。 周りに置いた板はビニールの端を盛り上げ育苗箱を浸すプールの縁にするためのものです。
育苗は水田に隣接した畑で。ビニールシートを敷いて運んできた育苗箱を並べていきます。
まっすぐ、慎重にならべていきます。
この上に発芽した種もみが鳥に食べられてしまわないようにネットを掛け、さらに保温シートで覆います。ビニールハウスやビニールトンネルをつくって並べる方法もありますが、北城さんは、あえて低めの温度で時間をかけて成長させることで「根元がしっかりした苗ができる」と言います。
発芽した種もみが鳥に食べられてしまわないようにネットで覆います。
さらに保温シートをかぶせます。
10日ほど後に水を入れプール状にするため周りに板で壁をつくって完成です。
水に漬かるのはビニールシートでプール状にした部分だけなので育苗箱の設置や搬出の際、足元がぬかって苦労することもありません。
今年(2022年)の場合、4月30日に播種機で育苗箱をつくり、その日のうちに畑に運んでプール育苗をスタートさせました。 連休明けの5月9日に保温シートをはいで、最初の水入れ。10日後の19日には鳥よけのネットもはいで5センチほどに成長した苗が姿を見せました。
鳥よけのネットをはぐと青々とした苗が姿を見せる。
ここで丈夫な苗にするために苗踏みをします。
10キロ以上のローラーで苗踏み
じゅうたんのごみを取るためのローラー程度のことかと思っていましたが、とんでもありません。 青々と伸びた苗が茂る育苗箱の上に北城さんが乗り、重さ10キロ以上はある自家製のローラーを引いていきます。背丈が15センチほどになって田植えができるようになるまで、7~5回、繰り返すそうです。
文字通りの「苗踏み」。並んだ育苗箱の上に乗って10キロ以上はあるローラーを転がしていく。
種まきから35日ほど。6月初めが田植えになるそうです。